子どもの成長とともに、物との付き合い方って変化していくと思うんです。
着れなくなった服は処分したり、遊ばないおもちゃは譲ったり。
気づくといつしか自分の身の回りから、
子どもの物ってどんどん姿を消していると思うんです。
でも、そんな日々の暮らしのなかで、
ずっと「在る」のが、
子どもの成長と合わせて椅子も成長(進化?)していく
「子どもダイニングチェア」という存在。
≫≫ 子どもダイニングチェア ってどんなもの?
初めての製作&納品から10年が経過して、
その椅子に大きな変化が見られる時機が、ちょこちょこと訪れる…
と同時に、実際に使ってくださっている方からお話を伺うと
「あれ?」と、今まで気づきそうで気づけなかったことが見えてきました。
今回はそんなmajakkaの「大人になってもずっと使える子ども椅子」のおはなしです。
~ 赤ちゃんから子どもへ成長し椅子はどうなった? ~
製作当初の想いは「子どものために」に贈ろう。でした。
食事を始めたばかりの子どもにとって(1才~)座り心地が良く、
落ち着いて居られる椅子。
とにかく動きたい盛りの子どもが相手ですから、
少しでも心地よく「じっと」してもらえたら嬉しいなあ。
そんな想いのもと製作しました。
でも、お客様にお話を伺うと、子ども視点(子ども自身)というより、
むしろ大人視点・親御さん視点が育まれていて、
「そうなのか!」と、ドキリと感動してしまいました。
Q1.小さな座面から、大きな座面(大人椅子と同じ大きさのもの)に切り替わって、どうですか?
「息子が成人と言わずとも、大きくなって一人暮らしを始めるって時に
『これ(椅子)持ってく』ってなったら、
それ想像すると、成長を感じる嬉しさもあるけど、
ここに置いてあったはずの椅子が無くなっちゃったなあ・・・
っていう残された側(親)の淋しさもあるよね。」
Q2.肘掛けを外す頃合いに「外しましょうか?」と提案したところ、
ご本人、肘掛けの存在が気に入っていたのかな?なかなか外したがらなかったでしょう。
肘掛けのどんな点が良かったんだろう?
う~んって、少し考えながら、その頃のことを思い出すお客様。
その頃って、どんなふうに座ってた?と訊ねると・・・
「肘掛けに足かけて座って、テレビ見てたなあ・・・」
と。その頃の習慣のようなものを教えてくれました。
Q1.のお答えから・・・
成長の喜びとともに、椅子が消えたら…の喪失感。
という相反する感情の起伏が伝わってきて、
こちらも自分の息子のことを重ね合わせ想像し、心にジーンときました。
Q2.のお答えから・・・
幼少時の習慣やクセって、いつの間にやら。
気づいた頃には無くなってしまうけれど、「そばに在り続ける家具=椅子」が、
定点観測のモノサシとなって、ちいさな成長の歩みを刻む役目になってる!
物が「在る」ことで思い出せる、そんな「在る」の意味を考えました。
この2つの質問をして、返ってきたお答えを受けとめたとき、
椅子を使ってる当の本人より(子ども)、
それを見守ってる大人の感情を揺さぶる存在に、椅子がなっている!
そこに感動したんです。
椅子というモノが「在る」。
その在るというモノの存在感が、大人の感情に作用し、ときに揺さぶりをかけ、
大人の感情を育んでいるのかもしれないなあと感じたんです。
最後に、お客様に「子どもの頃から持ち続けている『物』はありますか?」と訊ねると
「本。」
と、返ってきました。
引っ越しを重ねながらも心に留まる児童文学の本は、ずっと持ち続けている、と。
それは、いま暮らす家の見える場に他の本と一緒に並んでいて、
常に見返すわけではないけれど、
「在る」ってことが、安心感につながる。
とお話ししてくださいました。
わたしも、同じく「本」は持ち続けています。
でも、今回紹介する椅子のような、子どもの頃からずっと使い続けた「家具」は無いんです。
だからこそ、なのかもしれない。
子どもたちに、
在るっていうことが、理屈じゃなくて「安心感」につながるモノとして、
贈ることが出来たらいいなあ、
在ることの安心感を、親から子へと、継承できたらなあと思うんです。
子どもダイニングチェアが生まれて10年。
これからも「暮らしのなかに、あるなあ」を、じんわり感じられる存在として。
そして、旅立つときも見据えて、感情を豊かに育むアイテムとして、そばに居てもらえたら、と思うのです。
座ってくれる子どもたち、見守ってくれるお父さん・お母さん、おじいちゃん・おばあちゃん、
みんな、ありがとう~。