故人との向き合い方も時代に応じて変化してきているなということを実感します。
majakkaでも「そのひとに合った」祀るかたち・お仏壇を製作しています。
今回、お仏壇のご依頼をいただいたお客様から、
ご注文にいたる経緯をお伺いしました。
大きさや形の視点が新鮮で、やさしさに満ち、とても心に残るお話しでしたので、
皆さまにお伝えしたいなあと思い、記事にしました。
「小さなサイズ」である理由
まず、ご依頼のお仏壇を眼の前でご確認いただくと
「わー、かわいい」
仏壇だけど、かわいい。
小ぶりで、ちょこんとしてるのですが、
キチッと背筋をのばした「しっかりさん」、そんな印象のある仏壇が出来上がりました。
このサイズに仕上げた理由をお伺いすると・・・
「両親の位牌だけを大切にそっと祀りたい。それだけでじゅうぶん。」
大切な想いをかみしめて、明るく朗らかにお話しを始めてくださいました。
お客様曰く、
実家から譲るよと言われた仏壇は、仏壇らしく黒くて物々しい雰囲気が漂っていて、
これは自分の身近に置くものではないな…と感じたそうです。
仏壇のことを調べると並べる物や並べ方にしきたりがあって、
それは自分には馴染まない、とも感じたそう。
自分の望むかたちにするのなら「小さく」作ろう。
両親を想う気持ちが、お客様の希望する「かたち」から
やさしさとして伝わってきました。
自由に制限をかけて生まれる、自分らしさ
「当初は台を用意してそこに仏壇をのせようか…とも考えたんです。
でも、台があると大きさに自由が出てしまう。
その自由さが、あれも出来るこれも出来ると、
自分の意図していないしきたりに則った形に近づいてしまう。そんな気がしたんです。」
そこで、台ではなく、普段の暮らしの中に在る本棚の中に、
「私の」仏壇を作ろう。と考えたお客様。
そうなると必然的にサイズも決まるし、小さくなるし、
自分の想いを反映させたものになる。
そんな折、「かわいい仏壇があるよ」と、お客様の娘さんが見つけて下さったのが、
マヤッカの納品事例にアップされていた仏壇でした。( こちら >> )
自由が、かえって自分の望まない方向にいってしまうことを懸念し、制限を設ける。
既成概念や既存のものに、引っ張られることなく、自分は、こうしたいな。
その気持ちに真摯に向き合い、自分の希望に添ったものを作ってもらう。
オーダーメイドというと「自由に作れる」というイメージがあるのですが、
その逆の「自由に制限をかける」という発想が、新鮮であり、とても魅力的でした。
自分の想いに忠実にうごいて生まれる「自分らしさ」が
今回の依頼品には満ちていて、お話しを聴きながら、
納得する場面が多々ありました。
「これだったら可愛いから、娘にも引き継いでもらえるかな」
と笑顔で語ってくださったお客様。
ご自身を越えた次世代へ継ぐ想いに心があたたかくなりました。
作り手として出来ること
私たち作り手は、お客様の気持ちや言葉に耳を傾け、
「一緒に考えること」をとても大切にしています。
物を作るうえで、物と人の関りや、
その物が暮らしに与える影響を、お客様と一緒に考えるのです。
なぜ、それを作るのか。
なぜ、それを欲しているのか。
一つひとつ丁寧に解きほぐした先には、漠然とではない、
その人なりの明確な「こたえ」があり、
私たち作り手の心を揺さぶります。
その人なりの「かたち」は、その人が納得する「かたち」。
だから、そのモノが暮らしのそばにあり、触れたり眺めたりする行為が重なるほど、
満足感や心の安寧、慈しみが増していくと思うのです。
オーダーメイドは用途だけの存在ではなく、
心に作用する、これからの日々の暮らしを育てていくモノであってもらいたい。
そう願いながら、一つひとつ製作しています。
「小さな箱」が、暮らしのそばにあること。
それが、心にあかりを灯す存在であると、わたしたちは信じています。
ご注文くださり誠にありがとうございました。